著作権侵害訴訟の侵害著作物の特定性について2
2022年11月30日付本コラムでは、社内イントラネット事件(東京新聞に掲載された新聞記事を無断でコピーし、従業員が閲覧可能な社内イントラネット内の掲示板に掲載したとして、中日新聞社が「つくばエクスプレス」を運営する首都圏新都市鉄道株式会社を著作権侵害で訴えたというもの)に関する令和4年10月6日に言い渡されました東京地裁判決について論じました。東京地裁判決では、①新聞記事の著作物性、②著作権侵害訴訟における侵害著作物の特定、③損害額認定が大きな論点となりました。そして、本事件は控訴され、知財高裁判決が令和5年6月8日に言い渡されました。知財高裁判決も、東京地裁判決を踏襲する内容となりましたが、若干の変更があり、今回はそのことを論じてみようと思います。
まず、①の新聞記事の著作物性については、「事故に関する記事や、新しい機器やシステムの導入、物品販売、施策の紹介、イベントや企画の紹介、事業等に関する計画、駅の名称、列車接近メロディー、制服の変更等の出来事に関する記事であるところ、そのうち、事故に関する記事については、相当量の情報について、読者に分かりやすく伝わるよう、順序等を整えて記載されるなど表現上の工夫をし、それ以外の記事については、いずれも、当該記事のテーマに関する直接的な事実関係に加えて、当該テーマに関連する相当数の事項を適宜の順序、形式で記事に組み合わせたり、関係者のインタビューや供述等を、適宜、取捨選択したり要約するなどの表現上の工夫をして記事を作成していることが認められ」るとして、東京地裁判決を踏襲する形で認められました。知財高裁で新聞記事の著作物性を認めた初めての判決になると思われます。
次に、②著損害論作権侵害訴訟における侵害著作物の特定については、「新聞記事においては、訃報や人事異動等の事実をそのまま掲載するものから、主題を設定して新聞社としての意見を述べる社説まで様々なものがあって、記載する事項の選択や記事の展開の仕方、文章表現の方法等において記者の個性を反映させる余地があるとしても、新聞記事であることのみから当然に著作物であるということはできない。」として、侵害を主張する側としては、侵害著作物の新聞記事を特定する必要があると示されました。侵害著作物については、概括的な提示ではなく、事実を積み重ねて具体的に特定していく立証が必要であることが改めて示された形となりました。
そして、③損害額認定では、東京地裁判決と同じく著作権法114条3項にかかる内部使用料規程に基づく算定ではなく、「1審被告による侵害態様、著作権法114条3項の規定する額は著作権侵害があったことを前提に事後的に定められる額であること等を総合的に考慮すると、本件イントラネットに掲載された新聞記事について、1審原告が著作権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額は、それぞれの記事の掲載の時期及び期間にかかわらず、掲載された記1事1本当たり5000円とするのが相当である。」として、やや「えいや」的な認定になっております。著作権侵害に関する損害額認定は、著作権侵害に対する抑止的要素もあることからして、このような「えいや」的な、やや根拠にかける損害額認定となることについては疑問がないわけではないですが、そのような損害額認定となることが改めて示されました。
本件は、著作権侵害訴訟におけるベーシックな論点と立証方法が提示されたものであり、エンタメ法務においてはおさえておくべきものだと思われます。
まず、①の新聞記事の著作物性については、「事故に関する記事や、新しい機器やシステムの導入、物品販売、施策の紹介、イベントや企画の紹介、事業等に関する計画、駅の名称、列車接近メロディー、制服の変更等の出来事に関する記事であるところ、そのうち、事故に関する記事については、相当量の情報について、読者に分かりやすく伝わるよう、順序等を整えて記載されるなど表現上の工夫をし、それ以外の記事については、いずれも、当該記事のテーマに関する直接的な事実関係に加えて、当該テーマに関連する相当数の事項を適宜の順序、形式で記事に組み合わせたり、関係者のインタビューや供述等を、適宜、取捨選択したり要約するなどの表現上の工夫をして記事を作成していることが認められ」るとして、東京地裁判決を踏襲する形で認められました。知財高裁で新聞記事の著作物性を認めた初めての判決になると思われます。
次に、②著損害論作権侵害訴訟における侵害著作物の特定については、「新聞記事においては、訃報や人事異動等の事実をそのまま掲載するものから、主題を設定して新聞社としての意見を述べる社説まで様々なものがあって、記載する事項の選択や記事の展開の仕方、文章表現の方法等において記者の個性を反映させる余地があるとしても、新聞記事であることのみから当然に著作物であるということはできない。」として、侵害を主張する側としては、侵害著作物の新聞記事を特定する必要があると示されました。侵害著作物については、概括的な提示ではなく、事実を積み重ねて具体的に特定していく立証が必要であることが改めて示された形となりました。
そして、③損害額認定では、東京地裁判決と同じく著作権法114条3項にかかる内部使用料規程に基づく算定ではなく、「1審被告による侵害態様、著作権法114条3項の規定する額は著作権侵害があったことを前提に事後的に定められる額であること等を総合的に考慮すると、本件イントラネットに掲載された新聞記事について、1審原告が著作権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額は、それぞれの記事の掲載の時期及び期間にかかわらず、掲載された記1事1本当たり5000円とするのが相当である。」として、やや「えいや」的な認定になっております。著作権侵害に関する損害額認定は、著作権侵害に対する抑止的要素もあることからして、このような「えいや」的な、やや根拠にかける損害額認定となることについては疑問がないわけではないですが、そのような損害額認定となることが改めて示されました。
本件は、著作権侵害訴訟におけるベーシックな論点と立証方法が提示されたものであり、エンタメ法務においてはおさえておくべきものだと思われます。