写り込みはどこまでOKか?

 写真撮影やビデオ収録をする際に、背景にあるキャラクターや絵画等が写り込んでしまうといったことがあります。当然、背景にあるキャラクターや絵画は著作物なので、こういった著作物の著作権者の承諾を得ない場合には著作権侵害になってしまうおそれがあります。ただ、このような写り込みはよくあることであり、そのような場合にまで著作権侵害を問うということは相当ではなく、長年の懸案でした。従来、雪月花事件(東京高裁平成14年2月判決)という裁判例の射程距離はどこまであるのかということが喧々諤々と議論されていましたが、同裁判例では明確な基準はなく、どうすれば写り込みや入り込みが著作権侵害に問われないのかということはブラックボックスでした。

令和2年著作権法改正がポイントになります!!

 そこで、平成24年著作権法改正に際し、「写り込み」であっても一定の要件を満たせば、著作権侵害が問われないことが明記され(法30条の2)、写り込みのセーフ/アウトラインが明確になりました。とはいえ、改正平成24年著作権法は、写り込みの方法を「写真の撮影、録音又は録画」に限定されていましたので、ここがウィークポイントでした。固定されない生放送・生配信、スクリーンショット等の固定はされるが別のやり方がスッポリと抜け落ちておりました。簡単に言えば、SNS利用を落としておりました。しかしながら、もはや、人々のコミュニケーションやコンテンツのやりとりはSNS利用が当たり前であり、改正平成24年著作権法では対応できないことが明らかになりました。

 そこで登場したのが、令和2年著作権法改正でした(同改正の主目的はインターネット上の海賊版対策ですが)。改正後は、写真の撮影、録音又は録画に限定されず、複製及び複製を伴わない伝達行為全般に広げられ、SNS利用での写り込みがほぼ網羅されました。また、改正平成24年著作権法では規定されていました著作物創作要件と分離困難性もなくなりました。

 ざっくり言えば、いかなる対象行為であれ、権利者の正当な権利侵害とならないような、軽微な、写り込み(付随)であれば、写り込みはセーフといえるようになったと思います。とはいえ、まだまだ、軽微って何?付随の線引きはどうするの?といった悩みはあり、その要件解釈は実務でしっかりと検討していくものになると思います。ただ、SNS利用における写り込みのセーフ/アウトラインがかなり明確になってきたのは事実であり、今後、写り込みに関する実務での判断はかなりクリアになっていくと思われます。

2022年10月12日

執筆者:弁護士 室谷 光一郎