リーチサイト規制からの海賊版サイト問題 -漫画村-

 インターネット上では、音楽・アニメ・映画・漫画等の様々なコンテンツが流通しており、コンテンツ業界もインターネットを介したコンテンツビジネスに力点を置いております。他方で、こうしたコンテンツを無断で複製し、正当な対価を権利者に支払うことなく利用できる状態にした著作権侵害コンテンツ(いわゆる海賊版)も多く出回っております。こういった行為は、複製権(著作権法21条)、公衆送信権(法23条1項)の侵害行為であり、民事だけでなく刑事罰の対象ともなります(法119条1項)。ただ、「リーチサイト」のサイト運営者に対しては、第三者が違法に著作物をスキャンしアップロードしたサイトのリンク先を掲載しているに過ぎず、自らスキャンやアップロードを行っていないため、著作権侵害を問えないのではないかという問題がありました。そこで、令和2年著作権法改正では、海賊版に利用者を誘導する行為そのものが、規制対象となり、リーチサイト規制も成立致しました(法30条1項4号・同2項、法113条2項~4項、法119条2項4号・5号、法119条3項2号・同5項法120条の2第3号等)。

 そして、令和6年4月18日、海賊版サイト「漫画村」で漫画を不正に公開されて損害を被ったとして、出版大手のKADOKAWA、集英社、小学館の3社がサイトの元運営者に損害賠償を求めた訴訟において、東京地裁は、元運営者に対し、計17億円超の支払いを命じる判決を言い渡しました。出版社が有する出版権や独占的利用権を侵害する悪質な行為であり、コンテンツの公正な利用を促進していくためにも極めて妥当な判決であったと思います。ただ、元運営者(著作権法違反で実刑判決となり服役した後に出所)が、「自分には財産がないため、お金を取るのは難しい」「反省はしていない。逃げ切ります」等と話しているらしいです。
 
 海賊版サイトのようなフリーライド促進行為は、クリエイター、コンテンツメーカーに多大な経済的被害を生じさせ、結果として、優れたクリエイターやコンテンツを生み出せなくなってしまう恐れがある極めて悪質な行為です。こうした悪質な行為に対しては、断固とした対応を取っていく必要があり、法もその整備を行っていくべきだと思います。
2024年4月25日

執筆者:弁護士 室谷 光一郎