ゲームの著作権侵害事件

 ゲームの「パクリ」問題に関する著名な著作権侵害事件に、釣りゲーム事件(知財高裁平成24年8月8日判決)が挙げられます。株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)が提供した「釣りゲータウン2」というゲーム内の船釣り画面や、画面の遷移(トップ→釣り場選択→キャスティング→釣果画面)が、「釣り★スタ」というゲームに類似するとして、グリー株式会社が著作権侵害を主張した訴訟になります。第一審判決で認められていた著作権侵害について、知財高裁は、「釣りゲームにおいて、魚や釣り糸を表現すること自体は、ありふれたものというべきである。そして、魚を具体的な魚の絵ではなく、魚影をもって表現すること自体は、アイデアの領域というべきものであるし、従前から、魚を魚影により表現したゲームも存在したものである」であるとして著作権侵害に該当しないと判断しました。ゲーム画面やゲームシナリオに関する流れといったものは、ありふれたものであり、アイデアの域を出ないため著作物としての保護に値しないという結果になりました。
 そして、放置少女事件(知財高裁令和3年9月29日判決)もまた、同様の流れにある裁判例になると思われます。「放置少女 ~百花繚乱の萌姫たち~」の著作権者が、「戦姫コレクション ~戦国乱舞の乙女たち~」を制作及び配信する行為に対し著作権侵害を主張した訴訟になります。歴史をテーマにし、歴史上の武将を美少女化し、フルオート機能を備えた放置系RPGゲームであることが共通しているものであり、ゲームの基本的構成、キャラクター構成、画面構成、利用規約、ゲームプログラム等に類似が見られたものでした。そして、本訴訟においては、第一審判決である東京地裁令和3年2月18日判決が「ゲームにおける各画像及びその組合せ・配列については、プレイヤーによるリンクの発見や閲覧の容易性、操作等の利便性の観点から機能的な面に基づく制約を受けざるを得ないため、作成者がその思想・感情を創作的に表現する範囲は自ずと限定的なものとならざるを得ず、上記制約を考慮してもなおゲーム作成者の個性が表現されているものとして著作物性(創作性)を肯定し得るのは、他の同種ゲームとの比較の見地等からして、特に特徴的であり独自性があると認められるような限定的な場合とならざるを得ないものというべきである。」と示唆的な判示をしております。類似性は多々指摘されましたが、結論としてはありふれたもの、アイデアに過ぎないと判断されました。
 両裁判例、特に、放置少女事件東京地裁判決から分かることは、ゲームのシステムやルール、ストーリーは著作物として保護されづらいということです。先行ゲーム開発会社からすると極めて理不尽な裁判例の蓄積でありますが、ゲーム開発会社においては、「パクリやすい」現状を踏まえて、ゲーム開発を深化させていくしかないのではないかと思います。
2023年9月4日

執筆者:弁護士 室谷 光一郎