著作物の二次利用は進むか?

 著作物を利用する際には、著作権者の許諾が必要ですが、著作者や著作権者は誰なのかが不明な著作物は多くあります。著作物が作成され、その一度きりの利用しかないのであれば特に問題はなく、また、デジタル化、グローバル化が進展していない状況時には、大きな問題はなかったかもしれません。が、デジタル化、グローバル化が進展し、著作物の二次利用がクローズアップされる今日、著作者や著作権者が不明な著作物の利用は困難であり問題として認識されるようになってきました。

 そして、2022年12月21日、文化庁にある文化審議会著作権分科会基本政策小委員会において、「分野横断権利情報データベースに関する研究会報告書」が提示され、著作権処理の手続きを簡素化する方向性が示されました。本年の通常国会において提出される予定の著作権法改正において、簡素で一元的な権利処理方策の実現に向けて、集中管理の有無や、著作権者又は著作権者との調整役となる者等の権利情報を迅速に見つけることができるようにするため、有効なデータベースの構築が盛り込まれるようです。同報告書からは、映像や音楽などの分野を問わず、利用希望者からの相談や申請を受け付ける一元的な窓口組織が新設され、著作権使用料相当額を支払えば一時的な利用を認める制度設計になっております。また、同報告書記載の分野横断権利情報検索システム構築に係る工程表によれば、来年以降にシステムのテスト等が開始され、新制度の施行が近々に始まることが期待されるようです。

 著作物の二次利用のプッシュ、クールジャパン戦略等、近年、コンテンツビジネスの二次利用を促進する動きはありましたが、なかなかその成果がはっきりしておりませんでした。が、本年の著作権法改正によって、著作権処理システムが構築されれば、その土台作りとなることは期待できそうですので、あとは、網羅的で明確なシステム構築を国にはしっかりと行ってもらいたいです。
2023年1月11日

執筆者:弁護士 室谷 光一郎