放送法改正に伴うインターネット配信と放送の融合の深化、放送法の意義
2024年5月17日、インターネットを通じた番組等の提供をNHKの必須業務にすること等を柱とする改正放送法が国会で可決、成立しました。
放送法の一部を改正する法律案の概要
従前からインターネットを通じた配信業務をNHK、民放ともに進めてきましたが、法によってインターネット配信がNHKの「必須業務」になるということは、電波を通じた放送概念がいよいよもって脱構築されていく時期になってきているように思います。30年来言われてきたインターネット配信と放送の融合が深化していくことを法も後付けではありますが認める時代になってきたと言えると思います。
このようにインターネット配信と放送の垣根がなくなってきますと、インターネット等には課せられていない義務をNHKを中心とする放送局が負わないといけないのは何故かという古典的論点が再浮上してくるように思います。放送番組審議機関設置等(放送法6条)、放送法は放送局に様々な法的義務を課しております。なかでも、放送法4条1項は、
「放送事業者は、国内放送及び内外放送(以下「国内放送等」という。)の放送番組の編集に当たっては、次の各号の定めるところによらなければならない。
一 公安及び善良な風俗を害しないこと
二 政治的に公平であること
三 報道は事実をまげないですること
四 意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」
と内容規制的文言を設定しております。とは言え、同条については、放送法は放送や編集の自由を重視しており、独善的な放送をひかえる倫理規定であるとの考え方が通説です。ただ、政府は、放送法4条1項2号が定める「政治的に公平であること」については、①政治的な問題を取り扱う放送番組の編集に当たっては、不偏不党の立場から特定の政治的見解に偏ることなく、放送番組全体としてバランスのとれたものであること、②その判断にあたっては、一つの番組ではなく、放送事業者の番組全体を見て判断するとの解釈を示し、倫理規定以上の意味合いを持たせているようにも感じられます。そして、2016年2月12日、政府は、②について、「一つの番組でも、極端な場合は政治的公平を確保しているとは認められない」との統一見解の補充的に発表したことから、その意味合いをより深めたのではないかとも考えられています。
従前は、電波稀少説等によって放送法による制限についての制度趣旨が説明されていましたが、時代にそぐわなくなってきているのは明らかです。他方で、何らかの公平原則がなければ報道や言論にある種の偏りが発生し、結果的に民主主義の根幹たる表現の自由が脅かされかねません。インターネットにおける言説の偏りはいみじくもそのことを示しているように思います。インターネット配信と放送の融合が深化していく中、放送法までがそのことを追認した状況下において、放送法の意義は何かということがより一層問われるようになってきております。
放送法の一部を改正する法律案の概要
従前からインターネットを通じた配信業務をNHK、民放ともに進めてきましたが、法によってインターネット配信がNHKの「必須業務」になるということは、電波を通じた放送概念がいよいよもって脱構築されていく時期になってきているように思います。30年来言われてきたインターネット配信と放送の融合が深化していくことを法も後付けではありますが認める時代になってきたと言えると思います。
このようにインターネット配信と放送の垣根がなくなってきますと、インターネット等には課せられていない義務をNHKを中心とする放送局が負わないといけないのは何故かという古典的論点が再浮上してくるように思います。放送番組審議機関設置等(放送法6条)、放送法は放送局に様々な法的義務を課しております。なかでも、放送法4条1項は、
「放送事業者は、国内放送及び内外放送(以下「国内放送等」という。)の放送番組の編集に当たっては、次の各号の定めるところによらなければならない。
一 公安及び善良な風俗を害しないこと
二 政治的に公平であること
三 報道は事実をまげないですること
四 意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」
と内容規制的文言を設定しております。とは言え、同条については、放送法は放送や編集の自由を重視しており、独善的な放送をひかえる倫理規定であるとの考え方が通説です。ただ、政府は、放送法4条1項2号が定める「政治的に公平であること」については、①政治的な問題を取り扱う放送番組の編集に当たっては、不偏不党の立場から特定の政治的見解に偏ることなく、放送番組全体としてバランスのとれたものであること、②その判断にあたっては、一つの番組ではなく、放送事業者の番組全体を見て判断するとの解釈を示し、倫理規定以上の意味合いを持たせているようにも感じられます。そして、2016年2月12日、政府は、②について、「一つの番組でも、極端な場合は政治的公平を確保しているとは認められない」との統一見解の補充的に発表したことから、その意味合いをより深めたのではないかとも考えられています。
従前は、電波稀少説等によって放送法による制限についての制度趣旨が説明されていましたが、時代にそぐわなくなってきているのは明らかです。他方で、何らかの公平原則がなければ報道や言論にある種の偏りが発生し、結果的に民主主義の根幹たる表現の自由が脅かされかねません。インターネットにおける言説の偏りはいみじくもそのことを示しているように思います。インターネット配信と放送の融合が深化していく中、放送法までがそのことを追認した状況下において、放送法の意義は何かということがより一層問われるようになってきております。