原著作物と二次的著作物について

 昨今、漫画を原作としてドラマが制作され、その内容をめぐり、漫画原作者がお亡くなりになるという痛ましい出来事がありました。
 著作権法の観点からすれば、原作である漫画が原著作物、ドラマが二次的著作物であり、それぞれが著作物として保護されます。そして、原著作物を改変・翻案した二次的著作物(法2条1項11号)を作成、利用等する際には、原著作物の著作者の使用許諾が必要となります(法28条)。そのため、二次的著作物であるドラマの制作においては、原著作物である漫画の著作者である漫画家の使用許諾が必要となります。しかしながら、動画コンテンツであるドラマと静止画である漫画では、表現方法も異なり、また、視聴者と読者にも差異が生じます。また、ドラマの制作期間の短さ、キャスティングからのドラマ世界観構築がなされる実務の観点からすれば、漫画で描かれている世界観とドラマの世界観が異なるということはドラマ制作の構造上生じるように思います。やはり、原著作物と二次的著作物は異なるということです。
 そもそも、原作である漫画や著作者である漫画家の意図を超えた二次的著作物のドラマを制作するということはあってはならないと思います。他者の創作物に依拠する以上は、他者の創作物が有する世界観に対するリスペクトが大前提となります。そのリスペクトの上に新たな世界観を付加するような創作物を創作することが二次的著作物の創作性にあるように思います。

 今回の痛ましい事件は、原著作物と二次的著作物の関係をそもそもどのように構築すべきなのか、ドラマの制作において原作である原著作物にどのように向き合うべきなのか、また、ドラマの制作においてはもっと自らがアイディアを出して原作を創作し発信していく必要があるのではないか、そんな様々な問いが投げかけられているように思います。エンタメコンテンツをより豊潤なものにしていくためには、他者の創作物に対するリスペクトを前提にしていってもらいたいものです。
2024年3月12日

執筆者:弁護士 室谷 光一郎