メディア業界とフリーランス保護法について

 2025年6月17日、公正取引委員会は株式会社小学館及び株式会社光文社に対し、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(以下「フリーラ保護法」といいます)第3条第1項(取引条件の明示義務)及び第4条第5項(期日における報酬支払義務)の規定に違反する事実が認められたとして勧告を行ったことを公表しました。
(令和7年6月17日)株式会社小学館に対する勧告について
(令和7年6月17日)株式会社光文社に対する勧告について

 今回の勧告は2024年11月1日に施行されましたフリーランス保護法の制定後、初の事例となります。違反内容は、いずれも、「給付の内容」「報酬の額」「支払期日」を明示しなかったこと及び「当該事業者から役務の提供を受けた 日までに報酬を支払わなかった」等が挙げられていますが、「当該事業者から役務の提供を受けた 日までに報酬を支払わなかった」ことに重きが置かれたのではないかと推測されます。なお、株式会社小学館の場合は191名のフリーランスの方、株式会社光文社の場合は31名のフリーランスの方との取引に違反行為が指摘されています。
 また、勧告ではありませんが、2025年3月28日、公正取引員会はゲームソフトウェア業、アニメーション制作業、リラクゼーション業及びフィットネスクラブの事業者45社に対し、フリーランス保護法に基づき、契約書や発注書の記載、発注方法、支払期日の定め方等の是正を求める行政指導をしたと公表しています。
(令和7年3月28日)特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律に基づく指導について

 上記したとおり、2024年11月1日にフリーランス保護法施行以来、メディア業界を対象とするものが散見されるようになって来ています。本コラムでも再三、取り上げて参りましたが、昨今の国家戦略としてエンタメビジネスに力を入れるようになってきており、そのためにはクリエイターの環境改善がその課題になるという意識を国家レベルで共有されるようになってきています。フリーランス保護法に基づく行政指導や勧告には直接的な効果はないかもしれません。しかしながら、フリーランス保護法等に基づく行政指導や勧告がメディア業界に目立っているということは、クリエイターの環境改善を強く求めるという国家意思が働いていると考えるべきであり、メディア業界及びメディア関係企業は、もはや、昔ながらの「なあなあ」の関係や「買いたたき」等からの脱却が強く求められている状況に気付く必要があります。クリエイターの環境改善に真正面から取り組むことで、より豊潤なエンタメビジネスをクリエイトしていくこと、そこにメディア業界や関係者は注力すべきです。
2025年7月3日

執筆者:弁護士 室谷 光一郎