プロバイダ責任制限法から情報流通プラットフォーム対処法へ

 近年、インターネット上の誹謗中傷、著名人のなりすまし広告が本格的に問題となっておりました。インターネット地図サービス「グーグルマップ」の口コミに一方的な悪評が記載され、その削除請求及び名誉毀損に関連する損害請求を求める訴訟が様々な裁判所で提訴され、認容されるという状況も出ておりました。そうした中、誹謗中傷等のインターネット上の違法・有害情報に対処するために、プロバイダ責任制限法の改正案が国会に提出され、2024年5月10日、国会で可決、成立しました。そして、改正内容がこれまでの投稿の発信者情報の開示にとどまらない内容でしたので法律の名称も変更されました(正式名は「特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律」ですが、以下、「情報流通プラットフォーム対処法」といいます)。

 情報流通プラットフォーム対処法は、インターネット上の誹謗中傷等に関する被害者からの要望が多い投稿の削除に関しては、制度化が進んでおらず、課題が多く存在するとして、グーグル等の大規模プラットフォーム事業者に対し、直接に制度設計を課すことを主眼としております。

すなわち、
(1)対応の迅速化
 ①削除申出窓口・手続の整備・公表
 ②削除申出への対応体制の整備(十分な知識経験を有する者の選任等)
 ③削除申出に対する判断・通知(原則、一定期間内)

(2)運用状況の透明化
 ①削除基準の策定・公表(運用状況の公表を含む)
 ②削除した場合、発信者への通知
の措置を大規模プラットフォーム事業者は行わなければならなくなります。

 従前、プラットフォーム事業者によって自主的に対応していた相談窓口の公開やそこでのユーザー対応や削除基準については、「甘い」との評価がなされることが多々ありましたが、情報流通プラットフォーム対処法によって、それらが法的義務として明確化され、削除に関する基準の整備や公表も事業者側が行う必要が生じました。そこで、誹謗中傷等の違法・有害な言説に関する消費者の視線を受けた対応をプラットフォーム事業者が乗り出していくことに期待できます。

 情報流通プラットフォーム対処法は、2024年5月10日に成立、同月17日に公布、公布日から1年以内に施行となっておりますので、各プラットフォーム事業者がどのような上記(1)(2)に関する削除関係に関する運用、削除基準を出してくるのか、この点を今後注視し、それに対する削除対応策を構築していくというフェーズに入っていくことになります。
2024年7月12日

執筆者:弁護士 室谷 光一郎