「No.1表示」に関する注意点

 自社の商品やサービスに関し、顧客に対する訴求を行いたい企業側(広告主)としては、自社の商品やサービスがいかに優れているか、競合他社の商品やサービスに見劣りをしていないということをアピールしたいものです。そのような動機から、「顧客満足度 No.1」等のいわゆる No.1表示等を行うようになっております。そして、SNSマーケティングが増加している今日、その問題性が顕在化するようになってきております。実際、令和5年度に消費者庁が行った景品表示法に基づく措置命令44件の内13件がNo.1表示に関するものであり、その問題性が顕在化してきていることが示されております。

 そうしたNo.1表示に関する実態を調査すべく、消費者庁が大々的な調査を行い、令和6年9月26日、「No.1表示に関する実態調査報告書」を公表致しました(以下、「本調査」といいます)。No.1表示に関する実態調査報告書

 本調査によれば、No.1表示では、「顧客満足度」、「品質満足度」、「コスパ満足度」等のように、商品等に満足したことを示すフレーズが多いこと、高評価%表示では、「医師の○%が推奨」、「おすすめしたい○○」等のように、専門家等が商品等の購入・利用を勧めていることを示すフレーズが多いことが報告されております。そして、消費者は、実際の利用者による評価が「No.1」である商品等だと認識するがゆえに、同種の他社商品等と比べて優れていると認識する傾向にあること、医師等の専門家が、客観的なデータや専門的な知見に基づいて「推奨」している商品だと認識するがゆえに、同種の他社商品等と比べて優れていると認識する傾向にあることが報告され、No.1表示の訴求効果が裏付けられております。そして、昨今は、不適切な調査を廉価で行う調査会社が数多く存在しており、そのような調査会社の裏付けが乏しい調査結果を検討することなく、かかる調査結果によって問題ないと判断して、訴求効果が見込まれるNo.1表示を安易に採用している実態が浮き彫りになりました。

 しかしながら、No.1表示等が、合理的な根拠に基づかず、事実と異なる場合には、実際のもの又は競争事業者のものよりも著しく優良又は有利であると一般消費者に誤認され、不当表示として景品表示法上問題となります(法5条1号)。そして、合理的な根拠と認められるためには、①比較対象となる商品・サービスが適切に選定されていること、②調査対象者が適切に選定されていること、③調査が公平な方法で実施されていること、④表示内容と調査結果が適切に対応していることが必要となります。

 そこで、広告主としては、No.1表示を行うに際しては、①事業者が講ずべき管理上の措置(法22条1項)の徹底、特に、表示等の根拠となる情報の確認を多角的に行っていくことが必要です。調査会社の報告を安易に採用せず、その調査内容の徹底的な検討が求められます。その上で、②一般消費者が表示の根拠となる情報を確認できるようにすること、例えば、表示物に調査方法の概要を直接記載することや、それが難しい場合にQRコードにより確認できるようにすること等を積極的に行うことで、一般消費者に誤認をさせないよう、適切な判断材料を提示する必要があります。
2024年11月11日

執筆者:弁護士 室谷 光一郎